【乳幼児睡眠アドバイザー・インタビュー②】中山藍子さん「能登半島地震の避難の体験で気づいたこと」
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2024.2.5
投稿者:赤ちゃんの眠り研究所事務局
みなさん、こんにちは。
ご訪問頂きましてありがとうございます。
「アドバイザーインタビュー」の第2回目をお届けします。
今回は、私たちの団体で「乳幼児睡眠アドバイザー」として活動をしていらっしゃる中山藍子さんに、能登半島地震で実際に被災され避難所で過ごされたご経験をお話頂きました。
このインタビューは、NPO法人 赤ちゃんの眠り研究所・代表理事の清水悦子さんと対談というかたちで、2024年1月11日にZOOMにて行われました。
第2回目 中山 藍子さん
<プロフィール>
・NPO法人赤ちゃんの眠り研究所認定 乳幼児睡眠アドバイザー
・精神保健福祉士
──本日は、乳幼児睡眠アドバイザーの中山藍子さんがお住まいの金沢市から能登へお正月
ご帰省されている中で、能登半島地震で実際に被災されたご経験を伺っていきたいと思います。
とても怖かったと思いますが、本当にご無事でよかったです。
NPO法人赤ちゃんの眠り研究所 代表理事の清水悦子さんも一緒に、どうぞよろしくお願い致します。
清水:中山さん、本日はよろしくお願い致します。
まだまだ大変な状況の中、お時間を頂きまして、ありがとうございます。
中山さん:よろしくお願い致します。
お正月に夫の実家に帰省中、地震に・・・
──中山さんのご家族の構成は?
私、夫、9歳の長女、6歳長男の4人です。
──さっそくですが、能登半島地震が起こった日のことについて教えて頂けますか?
中山さん:元旦は夫の両親の家に帰省していました。
私たちの家族の他、義理の父と母、義弟がいました。
本震の前の地震があったときに、石油ストーブを消して、子どもに上着を着せました。
16時10分に大きな本震が襲ってきました。
木造の家だったのですが、聞いたことがないような音と共に、家がきしんで、家族で外に裸足で飛び出しました。
清水:それは、怖い思いをされましたね・・・。
中山さん:はい。揺れがおさまったときに、義弟が家から靴を持ち出してきてくれて。貴重品もほったらかしで、着の身着のまま夫の車に乗り込みました。
海が目の前だったので、津波から身を守るために、7人で急いで車で避難をしました。
避難所で過ごした体験
清水:そこから避難所に行かれたのですか?
中山さん:はい。義理の両親の判断で、家から車で5分のところの中学校の避難所に行きました。崩れておらず、停電もしていなかったのは幸いでした。
清水:避難所の様子をお聞きしてもいいですか?
中山さん:1日目に避難所に到着したときには、避難所内を温める準備のため、入るまでに時間がかかりました。
途中で車を取りに戻り、初日は夫と義父の車に分れて車中泊をしました。
翌日に、布団や食べ物、貴重品を取りに行きました。
──ご不安な中、大変でしたね。避難所はどんな人たちがいましたか?赤ちゃんはいましたか?
高齢者の人が多いんですが、帰省中の人も多かったです。
赤ちゃんは私が見た感じだと、3~4人ぐらいいました。
体育館や教室、図書館などが避難所として使われていて、赤ちゃん部屋や、畳のある部屋には障害のある人の部屋などが作られていました。
車がない人は体育館に避難をしていました。
私たち家族は2日目を避難所で過ごしました。
水は最初に配られました。2リットルのペットボトルが1家族に一本ずつです。
水道は止まっていました。
トイレは1つだけ洋式で、男女1つずつ。タンクに水を入れて流していましたが、何百人もいるのでトイレが全然足りませんでした。仮設トイレは2つ、1日目の夜に設置されました。
認知症と思わる方もいたり、横になりっぱなしの高齢者の方、お世話をする方、家族がいない方などもいました。
避難所での眠りの問題
中山さん:避難所は夜の照明はつけっぱなしなので、なかなか眠れませんでした。
清水:人は安全が確保できていないと安心して眠れませんから、大変ですよね。
中山さん:そうですね。余震で目が覚めたり、怖くて・・・。正直言って、全然眠るどころではありませんでした。
避難所で過ごした2日目は、夜に何度か大きな揺れがあったので、上半身だけ布団をかけて、靴は履いたまま、いつでも逃げられるように備えていました。
清水:私たちは眠りから赤ちゃんとご家族を支援する団体ですが、災害があったときの情報の出し方には、どうしても迷いが生じてしまいます。
──中山さんは乳幼児睡眠アドバイザーとしても活動していらっしゃいますが、眠りに関して避難所で過ごして何か感じたことはありましたか?
中山さん:避難所ではおばあちゃんが赤ちゃんの寝かしつけなのか、長時間横抱っこしていたのを見かけました。
あの月齢の赤ちゃんには、縦抱きの方がいいかもしれないな。
ちょっと暑いかもしれない・・・。
照明が当たって眩しいかもしれないな、などと思いながらも、声をかけるのに迷いました。
緊急時にはどうしても安心して眠れないので、赤ちゃんを大人たちがかわるがわる抱っこして安心感を伝えることなどが、まずはできることかなと・・・。
あとは、高齢者の方が多いので、避難所を暖めすぎていて、暑く感じることもありました。眠りのためには室温も関係してくるので、眠りにくいだろうなと感じました。
避難所で眠りを整えるというのはなかなか難しいですね。
清水:落ち着いてきたら、光環境を整えるなどもできるといいですが、避難所の防犯上のこともありますし難しいこともあるのでしょうね・・・。
緊急時の情報発信と情報収集の難しさ
──情報はどのように集めましたか?
中山さん:災害用フリーWi-Fiがあるのですが、どうしてもアクセスが集中すると繋がりづらい状況もありました。
インターネットを見ると、被災地域以外の人が発信している情報に今欲しい情報はそういうことじゃないんだけどな、という違和感も感じることもありました。
一方で、アドバイザー仲間の赤ちゃん向けのアドバイスはとてもありがたかったですね。
清水:緊急時の眠りに対する適切な情報提供は、状況もさまざまな中で、お伝えすることの難しさを感じます。
日頃から小さな備えを習慣に
──災害時の情報は発信する側と被災地で受け取る側、それぞれに難しい面があるということもわかりました。
清水:平常時から赤ちゃんの睡眠や緊急時に必要なことを、小さなことからでも備えて考えておくのがいいかもしれませんね。
中山さん:ちょっとしたことなんですが、保存食はやはり美味しくなくて・・・。
ポテトチップスやチョコレートはなんて美味しいんだろうとありがたかったです。
子どもがいる場合は特に、普段からバッグにちょっとしたお菓子を入れておくなどもいいかもしれません。
赤ちゃんのいるご家族は、車の中におむつや着替え、おしりふきやウエットティッシュなど、赤ちゃんだからこそ必要なものって通常の非常用バッグのセットには入っていないので、成長に合わせて内容を見直すなどの日ごろの備えが必要だなと思いました。
あとは、地震が起きたときは、自分と子どもはパニックになってもいいので、とにかく逃げることを最優先することが大切です。
──非常持ち出しバッグなどは、家が崩れてしまうと取りに戻れないこともあるようなので、玄関の近くに備えておくということも必要かもしれません。
精神保健福祉士として伝えたいこと
清水:最後に、精神保健福祉士でもある中山さんが、実際に被災されてみて、ママのみなさんに伝えたいことはありますか?
中山さん:とにかくママも気持ちを吐き出してねと伝えたいです。
母親だからしっかりしないとと、気持ちにふたをしない方がいいです。
言葉に出して「さっきの揺れ、やばかったね」「怖いね」と言うだけでも違います。地震でパニックはみんなにあることです。
泣いたっていい。泣いてすっきりすることもありますから。
しんどいときは、一人で背負わないでください。
これは普段からも言えることですが、ママ一人溜め込まなくていいんです。普段から気持ちを吐き出す相手を作るということも大切なことかもしれません。
子どもたちには、逃げて避難所に来て落ち着いたら、状況を伝えましょう。
私も、「避難って何?」という子どもたちの疑問に答えて、説明をしました。
そして、平時には、ご近所さんに赤ちゃんがいるとアピールして、地域のつながりを大切にしておくのもいいかもしれません。
避難所では幼い子どもを連れてトイレに並ぶのも大変です。親だけでなく、まわりの大人のみなさんと協力できると、小さなことでも気持ちがラクになったり、本当に助かると思います。
正解はない。それでも子育て家庭に寄り添い一緒に考え続ける
清水:本当に大変な体験をされて、貴重なお話を伺わせて頂きました。
まだ不安な状況でお話する機会を作ってくださり、本日は本当にありがとうございました。
──中山さん、まだまだ不安な状況かと思いますが、お体に気を付けてくださいね。
あからぼも2024年は『ネムハグ』を合言葉に子育て家庭に寄り添い、眠りをぎゅっとハグするように大切にしていこうというメッセージを込めた活動を始めることになりました。
災害などの困難さのある状況でも、あからぼとして何ができるかを、子育て家庭のために一緒に考えることを続けていきたいと思います。
中山さん、清水さん、おふたりとも、本日はありがとうございました。
追記:現在、中山さんご家族は金沢市へ戻られていらっしゃいます。
(インタビュアー・記事執筆:鶴田名緒子)
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